名義預金
祖父母や親が子ども名義で預金する。
専業主婦の妻がへそくりを自分名義で預金する。
よくあるパターンがもしれませんが、相続税のことを考えるとちょっと気になります。
子ども名義で預金していても、まだ小さいから、あるいは勝手に使うといけないからと、
通帳と印鑑を祖父母や親が管理していては、実態としては管理している人のものと同じです。
相続発生の際は相続財産となります。
そもそも、その預金の原資(資金源)は誰が稼いだお金なのでしょう。
名義人ではありませんよね。
(家事労働の経済的評価は違う論点なので、ここでは触れません。)
もし、それは子どもにあげたもの、贈与したのだ、とするならば、贈与の証拠が必要です。
専業主婦の妻がつつましく家計をやりくりして
妻名義で貯めた預金いわゆる「へそくり」も同じです。
形式的な名義でなはなく、実質的に判断されるのです。
もちろん、身内に対し、通常の生活費、教育費などに充てるお金を
必要な時に必要な都度、渡すのは問題ありません。
税務的に名義預金と判定されるポイントは大きく4つです。
親子のパターンでみてみましょう。
① 資金の出どころはどこか
親の収入の一部を預金していた。親が昔から持っていた預金の残高を移した。
このような場合は、資金の出どころは親ですよね。
また、子どもに収入がない場合も、当然ほかの誰かが資金を出しているといえるでしょう。
②通帳・印鑑の保管・管理はだれがしていたのか
通帳や印鑑を親が保管・管理していれば、子どもは自由に使えません。
また、印鑑が親のものと同じならば、もう自分のもの同然。
実質的な所有者といっているようなものです。
③口座の運用はだれが行っているか
仮に、子どもに通帳や印鑑を渡していても、使用について指示し、
口座の運用を親が支配していたのならば、これも子どものものとはみなしがたいでしょう。
④贈与であるのか
この預金は子どもにあげたもの、子どもの名義にした時点で贈与した、
と考えているかもしれません。
しかし、贈与はあげた、もらった、の意思表示が合致していなくては成立しません。
子どもに黙って積み立てていては、ダメなのです。
(よかれと思ってやっている、というのはよくわかりますが。)
贈与とするならば、贈与契約書や贈与税の申告など
贈与であった証拠を残しておくべきです。
そんなこと、黙っていればわからないんじゃないの?
いいえ、税務署は金融機関に対して照会する権限を持っています。
もしかすると皆さんより分かっているかもしれません。
相続税の税務調査で、申告漏れ財産で最も多いものは現金・預貯金です。
これには、名義預金と認定された預貯金が相当含まれていると思われます。
「名義が違うから大丈夫」はもはや通用しません。
預金口座は過去の残高のデータが残っています。
きちんと追えば、家族間での口座の動きは一目瞭然。
言い逃れはできません…。
それでも、相続人も存在を忘れていた(自分では調べられなかった)名義預金が、
税務調査で発覚することはしばしばあります。
純粋に気がつかなくて申告漏れだったのなら、素直に修正申告すればよいだけのこと。
税引き後の財産はもらえるのですから見つけくれてありがとう、の気分です。
困るのは、自分名義の預金口座は当然に自分のものと思い、
相続財産として申告していなかったところ、名義預金と認定され、
修正申告や追徴課税でもめるパターンです。
これは株式でも同じことが想定されます。
それなりの金額であれば、追徴税額も大きくなります。
実質的にどうなのかという視点で一度見直してみるとよいでしょう。